園だより(2023年2月)
測隠の情と積善の家
共通テストが終わった。その結果で志望校の選択を迷っていることでしょう。蛍雪の功とか二宮金次郎という言葉はいよいよ人々、特に若者の中から無くなってきたと報道されています。大学全入時代に突入したと言っても、何倍もの大学があるかと思えば、定員を充足できない大学も多数存在する。ただ単に所属しているのではなくて、その目的を達成するために、そして少しでも自分の能力を向上させる目的で選ぶ、故に競争力の差が出てくるのは当然の帰結、大学という名前に昔ほど重きを置かなくなったし、ステータスのシンボルでもなくなった。とは言え、昔の高校生と同じかそれ以上に勉強し、努力した高校生にはうれしい便りが届いてほしい。残念ながら栄光を手に入れることができなくて、今となっては色褪せた浪人生活を余儀なくされても、次の一年間の頑張りは人生において決して無駄ではない。逆に大きな成功への一歩になるかもしれない。兎に角努力しよう。意欲を持とう。何事にも泣き言を言わずに積極的に取り組もう。そんな姿を人は知っている。言葉に出さなくとも人はじっと見ている。一年間の予備校生活の間にいろいろな友達ができ、様々な環境があることを学ぶだろう。昔は府立高校はオールマイティーで、私立高校は、ある意味、府立高校の不合格者の行くところであった。しかししばらくして、その立場が逆転した。成績優秀者は私立高校へなだれ込んだ。今、受験競争は幼稚園から既に始まっているとも言われている。英語教材も含んだ様々な学習教材、私立小学校への受験、小学校は公立でも、私立中高一貫校への進学、勉強する子とそうでない子の二極化が進んできた。勉強の能力、すなわち認知能力も大事だが、自制心、計画性、協調性、忍耐力、意欲 など等の非認知能力も大事であり、これも人生における大きな成功のカギだと言われる。広い園庭、幼稚園という有利な恵まれた環境を利用して、子どもたちのさらなる能力、隠れた能力を伸ばし、引き出していきたい。ところで、世の中はなぜもこうも索漠としたものになったのでしょうか。円安になり、物価が上がり、給料が上がらなくなって、ドイツに抜かれて、世界ナンバー3からナンバー4になるのは目前、もう抜かれているのかも。毎日のように一部の若者たちが疑いを知らない、あるいは持たない善良なお年寄りをだましてお金を奪う、危害を加える、命を奪うことが大きなニュースとなっている。一部の若者の暴走に過ぎないと言う人もいるが、由々しき事態になってきた。日本は世界で一番安全な国でなかったのか。私たちは恥の文化を忘れてしまったのだろうか。それがグローバル化、コスモポリタン化の悪い一面だろうか。日本や日本人の狭い範疇にとどまり、人と助け合い、人の難儀を見過ごしにできない慈悲心、惻隠の情を忘れてしまった、あるいは持っていないのだろうか。西洋の優れたものを取り入れることも大事だが、足元の日本人の長年にわたって培われてきた文化や思想、考えも本当に大切にしたい。最後に一つの言葉を贈りたい。「積善の家、必ず餘慶あり、積不善の家、必ず餘殃あり」善を積んできた家は必ず孫に至るまで幸福が続く。反対に不善の行いを積む家には必ず子孫に至るまで災禍がつづく。
太陽が少し私たちに近づいたとはいえ、一年のうちで一番寒い時期、天が私たちに与えた試練を克服し、明るい春に向かって一歩踏み出しましょう。
今月もよろしくお願いします。