鳳幼稚園

園だより(2013年12月)

動物園と聞いたらどういうイメージを思い浮かべるだろうか。まず天王寺動物園、この頃は大分きれいになったが、いかんせん敷地が狭いためにごちゃごちゃした感じ、あるいはアフリカを少し真似した各地のサファリパーク、それらが私たちの頭の中に固定化された動物園の姿、そこでは動物が見世物であることが強調され、本来の姿をあまり見ることはできない。旭川市の中心から少し外れた郊外にそれがあった。小高い丘すべてが動物園であり、今までのイメージと全くかけ離れた公園の中の動物園、樹木に囲まれた動物たちの緑のオアシスであった。ここには人をそれで呼び集めるような「珍しい動物」はいません。普通の動物たちの素晴らしさを伝えることに主眼を置いているそうです。さらに言えば、動物の価値に差があるような見せ方をしていないし、「ありのまま」の素晴らしさを感じ、価値を見つけ、「自然の大切さ、命の温もり、命の尊さ」を気づいてもらいたいと考えている。10年前に廃園の危機に会った動物園がいかによみがえったか、そして年間20万人しか来なかった動物園に同じ顔ぶれで300万人の来場者(単純計算で1日8000人強、1日何万人の来園者もあるとか。北海道の人口36万の旭川市ということを考えればこれは驚異的)を迎えるようになったか。そしてリピータも多い。私は危機に際して職員一丸となって、動物園の原点に立ち返り、動物たちの凄さと命の輝きを多くの人に伝えることをテーマに動物本来の能力を引き出し、ありのままの営みを見られるように工夫した事等、様々な創意工夫した事に尽きるのではと思っています。1時間30分にわたって坂東元旭山動物園長の話を聞きました。その中で聞いたことを少し書いてみます。ある時見学者が「なんやラッコやない、ただのアザラシやないか」と言われて本当に悔しかった。そしたらただのアザラシがラッコよりもすごいところ、本来の姿を見せてやろうやないかと考えて人を水の中のトンネルに導き、また太い透明の円柱の中をアザラシが元気よく泳ぐ姿を見せて大好評になった。動物の命を預かっているのだからこっちの動物がすごい、あっちの動物がたいしたことはないという意識が持てない。みんな同じという考え、珍しいものを入れてお客さんに来てもらうことはしない。私たちは生かされている。死の順番を待っている。動物たちも私たち同様生きたいと思っている。動物たちは与えられた環境の中で生きている、たんたんと生きている。たとえ狭い檻の中であってもオオカミはオオカミらしく発揮させてあげたい。動物園では動物が生まれたのはニュースであるが、死はタブーであるのはおかしい。命を閉じ込めているのだから死にましたという知らせをするべきで、死を認め、心の中で生き続けるようにしたい。死は日常の中にあり、動物たちも命を次世代に伝えることを本能的に行っている。誕生するだけ死があり、命を終わらせてくれる仕組みの中で命があふれているのが自然である。次の世代にバトンタッチするために動物は生まれてくる。私たちはそれぞれの種として一生送れる環境を整えてあげることが大事であり、ありのままが一番美しいと考えている。広い野生の地の動物が狭い場所で生活するのは動物の虐待と批判されることに対して、動物の居場所が次の世代に暮らす場所でないと繁殖しない。動物園で生まれ、育ったものがすぐに野生に返しても無理でないか。実際のところ、動物園の動物の80%以上が動物園(その動物園に限らないが)で生まれた動物で野生とは言えず、野生にいるから幸せとは限らない。初めての旭山動物園であったが感動があり、また来たいと思わせるような何かがある動物園でした。
 2013年、平成25年もいよいよ最終月、うれしいこと、悲しいこと、思い通りにいかなかったこと、いろいろあったでしょう。しかしけじめをつけて新鮮な気持ちで新しい年を迎えましょう。この1年間保護者の皆様には貴重なご意見、多大なご協力本当にありがとうございました。来る年も皆様方にとって幸多き年になりますよう心よりご祈念申し上げますと同時に21世紀を支える尊い人の育成に手を携えて一緒に進んでまいりましょう。最後になりましたが来年度も本年同様よろしくお願い申し上げます。