園だより(2016年12月)
未来への第一歩
一年の最終章、師走、12月、10番目の月、December. 私の周りでは人がどんどん鬼籍に入っていく。反対にこの世に生を受けて祝福される人も多い。しかし前者に比べると、その勢いには陰りがある。人はこの世を瞬間に通り抜ける旅人、与えられたわずかな時間に喜怒哀楽を感じ、刹那の幸福を与えられ、荒涼たる寂寞の荒れ地に急ぎ足で追いやられる。一日の黄昏が人生の黄昏に繋がり、真っ暗な闇の中に溶け込んでいく。人はその悲しみを頭で理解していたとしても、あえてその現実から目をそらし、刹那の楽しみ、快楽に身を委ねようとする。人間よりも長く生存する生き物が存在する。しかし今の倍の寿命が人に与えられるとしたら、人は今の倍の幸せを得るだろうか。かえって不幸がそれ以上に生まれないだろうか。限られた時間を知っているが故に人は青春をし、恋をし、仕事をし、愛を受け継ぎ、愛を伝えていくのではないだろうか。昔、がんの告知はされなかった、というより患者に与えるダメージが大きかった。しかし今は告知をしなければ医者は訴えられるという訴訟リスクを伴うので、必ず癌ですと告げる。たとえそれがステージ4の最終段階であっても。そして残されたわずかな人生を意味あるものにしてほしいと願って。それ以上に医学の進歩によって癌は不治の病でなくて、治るかもしれない病気の範疇に入り、人の三分の一が罹患して死ぬこの病気を患者も昔ほどの悲壮感を持って考えなくなったせいかもしれない。私は出来ないが、人によっては人生の終末を何歳かに設定し、人生のそれぞれの区切りで、何をすべきかを計画的に行っている人もいる。しかしながら大多数の人は自分の人生の終末を大きなものの手に任せているし、その日がもっともっと遠い未来のある日と思って今の今を生きている。高齢者でも考えが同じだろう。年の終わりになり、寒さが厳しくなってくると、心が閉鎖的になり、楽観的な思考から悲観的なものに変わってくる。ある意味私の精神がその年齢の領域に達していない未熟なせいであるかもしれない。今年は申年、私の何回目かの年であった。良いことも沢山あったかもしれないし、又そうでない事も一杯あったはずだ。それも時の流れと共に良いことも悪いことも過ぎ去ってしまった。今年平成28年、2016年も今月でいよいよ終わり、No news is good news. 「便りの無いのは良い便り」、熊本県で大きな地震があったが、それ以外の天変地異をひっくり返すような大事件はなかった比較的平穏な一年であった。もっとも個人にとっては大きな出来事があった人もいるかもしれない。目を外国に向けるとアメリカのトランプ氏が次期大統領に選ばれた事で、大きな衝撃が走り、いまだその事実を受け入れることが出来ない人がデモをし、反対運動を行っている。アメリカは一番の民主的な国家を標榜している。その国がルールにのっとって選んだ人だからと思うのに、自分の意に沿わない人が選ばれたことにまだ異を唱える人やメディアが多い。不思議な民主主義の理解力であるかもしれない。さて、来年、美木多幼稚園は40歳の、鳳幼稚園は5歳の、そして諏訪森幼稚園は87歳の誕生日を迎えます。それを記念して、3月1日、堺市西区鳳の西区役所に隣接の堺市立西文化会館ウエスティの大ホールで三園合同の年長さんの音楽発表会を開きます。それぞれの幼稚園で行ったクラス単位の発表会や三園合同の合唱などを考えています。詳しい内容に関しては現在、計画を詰めている状態です。三園の年長さんは300名弱、観客席は700席、当日は譲り合って見て頂くことになるかもわかりませんが、小学生になる前の子どもたちの生長ぶりを応援して頂ければ幸甚に思います。そしてこのことがそれぞれの幼稚園の未来への第一歩になればうれしい限りです。これからも変わってはいけないものを残しながら、変える勇気をもって意欲的に幼稚園教育を進めてまいります。今年一年間賜りましたご支援、お力添え大変ありがとうございました。来る平成29年、2017年が皆様方の上に幸福と健康の女神が宿りますように心より望みながら平成28年最後の文章といたします。今後ともよろしくお願い申し上げます。